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武蔵野美術大学鷹の台キャンパスの映像ドキュメント
「時の集積」 —建築と時間、その情報性と表現性
展覧会会場写真

 映像表現によって、創造溢れる美術大学の現在の姿から初期キャンパスの魅力までどのように保存することができるのか、その建築アーカイブにおける映像記録の実験的な試みとなった。建築アーカイブには膨大な図面や写真などの既存の所蔵資料があるなかで、映像の役割として建築の姿をリアルに伝えるために、より情報性を高め臨場感を持たせることを目標に、新たな映像表現に挑んだ。
 撮影手法として植物の成長や建造物が造られていく様子などで目にする、長期間の変化を映像にまとめることができるタイムラプス(微速度撮影)を用いた。今回のキャンパス撮影では、2年半の期間をかけて様々な角度から校舎を撮影し、キャンパスの建築的魅力を改めて考察する機会となった。今回のプロジェクトでは新たな撮影装置を開発することで、レールを使いカメラを長距離移動させながらインターバル撮影することが可能になった。そのことで空間の中で建築をより立体的にとらえることができ、なめらかに画角が変化する美しく臨場感のある映像を作り出すことが可能となった。20万枚以上の写真が紡ぎ出すタイムラプス映像によって、うつろう日の光が季節のなかで、日々刻々と変化しつづけるキャンパスの表情とその魅力を映像として記録することができた。
 現在のキャンパスは、多くの校舎が建ち並ぶと同時に初期キャンパスも一部増改築され、荒地に佇む当時の様相から大きく変化している。映像の中ではタイムラプスに加えて、竣工当初の初期キャンパスを3次元コンピュータグラフィックスによって再現することで、現在では見ることができない理想的なビューポイントから、往時の姿を蘇らすことができた。
 平成29年5月に開催した「芦原義信建築アーカイブ展」での展示での映像ドキュメントの公開では、プロジェクター8台による7m×2mの大型スクリーン4面の構成で約15分間の映像インスタレーションとして上映した。

シーケンス

タイムラプス撮影機材

撮影期間:2015年7月〜2017年4月
撮影日数:112日
撮影時間:659時間27分48秒
撮影枚数:209,265枚
カット数:178カット
カメラワークでの移動距離;968.72m

監修:篠原規行(武蔵野美術大学 造形学部 映像学科 教授/本学造形研究センター研究員)
制作:土井伊吹、増山 透
機材開発:株式会社よしみカメラ