研究会

平成25年度 第4回研究会「20世紀のダイヤモンド誌『週刊ダイヤモンド』デジタルアーカイブズについて」

発表者: 坪井 賢一(株式会社ダイヤモンド社 取締役)
     藤崎 登(株式会社ダイヤモンド社 デジタル推進部 部長)

日時: 2014年1月14日(火)  15:00-17:00

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歴代の週刊ダイヤモンド

(1)『週刊ダイヤモンド』100年 デジタルアーカイブズの発見 —過去・現在・未来のスタイル—
発表者: 坪井 賢一

ダイヤモンド社創業100周年(『週刊ダイヤモンド』創刊100周年)記念事業として、発表者は、紙の劣化と欠本を解消すべく電子化されていなかった1913(大正2)年の創刊号から2000年までの『ダイヤモンド』誌全てをデジタル・アーカイブすることを決めた。この「『週刊ダイヤモンド』デジタルアーカイブズ」を制作したことを通じて、経済雑誌の近代史を知り、そして未来を展望する様々な発見があったという。
本誌は、31歳だった経済記者・石山賢吉(1882-1964年)が2人の仲間とともに編集、発行したことに始まる。編集権が独立し、また記者の多様な価値観を認め、眼前の事実を重視して物事の本質を見抜く実用主義によって発行されてきた。例えば、武蔵野美術大学の前身・帝国美術学校の初代校長を勤めた北 昤吉(1885-1961年)も、一時期は定期寄稿家として政治評論で活躍した。他方、読者層や雑誌の構造は時代とともに変化し、創刊から1940年代までは近代資本主義の成長に伴って経済誌として読者を増やし、第二次大戦後は週刊化された。50-60年代の高度経済成長期には専門性を高め、70-80年代には日本を代表するビジネス誌となった。さらに90年代からはビジネスに加え、ビジネスマンの家族・ライフスタイルへと主題を広げてきている。
近年では、雑誌に加え、ウェブサイト上での展開も活発になってきており、1999年以降21世紀の記事は、PC、スマートフォン、タブレット端末での検索と閲覧が可能になり、最新情報を定期購読者へ配信する「Daily DIAMOND」、毎日更新するビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」など多様なメディアを駆使し、読者に情報提供を行っている。そして、冒頭に述べた「『週刊ダイヤモンド』デジタルアーカイブズ」も自社での編集企画に活用するだけでなく、図書館利用などを通じて一般向けのデジタル・コンテンツとして活用されてきている。このように時代に即応してきた『週刊ダイヤモンド』は、デジタル媒体上でも今後、新たな展開を見せていくことになるだろう。


(2)20世紀のダイヤモンド誌「『週刊ダイヤモンド』デジタルアーカイブズ」
発表者: 藤崎 登

続いて、同社にてデジタル関係の業務を担当し、本アーカイブズにも深く関わってきた発表者が、実際の制作の流れについて説明した。
「『週刊ダイヤモンド』のデジタルアーカイブズは、正式名称を「20世紀のダイヤモンド誌『週刊ダイヤモンド』デジタルアーカイブズ」と言い、現在、社内での資料として活用されている他、公共図書館や大学図書館向けのサービスとしても提供されている。総冊数約3,800冊、総ページ数約45万ページに及ぶ膨大な量の電子版が、PC上のwebブラウザーから閲覧できる。またキーワード検索と発行年による検索が可能で、拡大縮小、印刷などの機能がある。
今回のデジタル化の目的は主に2つあり、劣化の激しい紙媒体を永久に使用できるデジタルデータにすること、また当社の編集者や記者をはじめ利用者がキーワード検索で該当する記事を簡単に確実に抽出できるようにすることにあった。デジタル化にあたっては、創刊号から2000年までの87年分、すべての記事のスキャニングと検索用テキストの抽出が必要となり、前者に関してはデータを快適に閲覧でき、また二次使用が可能な解像度であること、後者に関しては正確なテキスト情報の抽出と整理が要件となった。
実際には、まず合本を解く作業から始め、スキャニングのテスト、画像フォーマットの決定、そしてなるべく現物に忠実になるような画像修正方針などについて決めた。このスキャニングのテストと同時進行で、検索用のテキストを抽出しつつ異体字や固有名詞などの表記統一を行った後、本作業に入った。その後は本スキャンを行いながら、欠本・破損等があれば図書館等に手配してスキャンを続け、同時にテキストの校正と整理も進めるなどし、1年半ほどで完成させることができた。